EBMナウ
EBM (Evidence based medicine::単なる、少数例の経験から得た知識ではない根拠に基づく医療行為。
今週のEBM,ナウ(80)

EBV関連小腸炎

 新しい造血細胞移植後合併症としてEBV関連小腸炎を紹介する。症例は56歳男性。多発性骨髄腫に対してtandem transplant後、ミニ移植を施行。ドナ-はHLA一致の姉。移植後83日目から大量消化管出血があり、動脈性と判断し、開腹手術。潰瘍部分を含む腸管切除。病理学的に潰瘍形成の原因として以下の病態をすべて否定した。1.腸管TMA、2.CMV感染腸炎、3.腸管GVHD、4.骨髄腫の腸管への再発。病変部位における多数の形質細胞浸潤からウイルス感染を疑った。その結果、腸管そしてその周囲リンパ節にEBER-1陽性所見を得た。同様の移植例をコントロ-ル例としたEBER-1の検討では、本症例の陽性細胞数は極端に多かった。

 写真は粘膜内及び粘膜下層 に黒色に染まる多数のEBER-1陽性細胞を示す。粘膜内にはEBER-1陽性細胞が腺管を取り囲むlymphoepithelial-like lesion(矢印)を認める。



コメント:移植の成功のためにはウイルス感染対策が重要である。初めての報告である「EBV関連小腸炎」はCMV感染に次ぐ重要な移植後合併症である。

文献:Tashiro Y. et al. Epstein-Barr virus-associated enteritis with multiple ulcers after stem cell transplantation: first histologically confirmed case. Pathology International 2006; 56:530-537.