EBMナウ
EBM (Evidence based medicine::単なる、少数例の経験から得た知識ではない根拠に基づく医療行為。
今週のEBM,ナウ(333)

-Horse vs. Rabbit ATG in aplastic anemia-
(ウシATGとウサギATGの比較試験)

目 的:重症後天性再生不良性貧血に対する抗胸腺細胞グロブリン(ATG)とシクロスポリンの併用による免疫抑制療法は、幹細胞移植に代わる有効な治療法で生存率を改善させる。 ウマ ATG が標準製剤であるが、ウサギ ATG は末梢血リンパ球の除去能が高い特徴がある。

対 象:2010年7月までの4年8ヶ月の間に、ウマ ATG とウサギ ATGを使用し、単一施設での無作為化試験を行った。 主要評価項目は6ヶ月の時点での血液学的有効率。

結 果:2群間比較ではウマ ATG 群(68%、95%信頼区間 [CI] 56~80)のほうがウサギ ATG 群(37%、95% CI24~49)より高かった(P<0.001)。 3年全生存率にも差が認められ、幹細胞移植の時点でデータを打ち切った場合の生存率は、ウマ ATG 群では96%(95% CI90~100)であったのに対し、ウサギ ATG 群では76%(95% CI61~95)で(P=0.04)、幹細胞移植を打ち切りとしなかった場合はそれぞれ94%(95% CI88~100)、70%(95% CI56~86)であった(P=0.008)。
 
 表1.ウマとウサギATGの2群間比較、血液学的改善率

判定期間

ウマATG

ウサギATG

P 値

3ヵ月

62%

33%

0.002

6ヵ月

68%

37%

<0.001





考 察:重症再生不良性貧血に対する初回治療としてのウサギ ATG は、血液学的奏効と生存率に基づくとウマ ATG より劣っていた。 (米国国立衛生研究所内部研究プログラムから研究助成を受けた)

コメント:ウサギATGのin vitroでの免疫抑制力が強いからと言って、臨床的にも良好な結果が期待できるとは言えない。

文献 . Scheinberg P et al. Horse versus rabbit atithymocyte globulin in acquired aplastic anemia. N Engl J Med2011;365:430-8