EBMナウ
EBM (Evidence based medicine::単なる、少数例の経験から得た知識ではない根拠に基づく医療行為。
今週のEBM,ナウ(318)

-Risk factors for bacterial infection after HCT-
(同種造血細胞移植後の細菌感染への危険因子)

  著者らの施設ではlevofloxacin薬剤耐性率が高かった事から、2004年以後自家および同種移植後の抗生剤予防投与は行っていない。 にもかかわらず、移植後感染症死亡率には変化ない。 そこで、移植前のCRPとフェリチン値を用いて移植後感染症の合併予知に関する有用性を検討した。後方視的検討である。

対象:
  2004年以後に京都大学で移植を受けた137例。
  年齢の中央値は47歳。
  全例が予防的抗生剤投与は受けていない。
  移植前に感染症を認めた例と1年以内に自家または同種移植を受けた合計25例を除外し、112例を解析対象とした。
  基礎疾患は全例が造血器悪性腫瘍である。

方法:
  66例(58.9)がstandard risk、移植細胞源は35.7%が血縁の骨髄、または末梢血、46.44%が非血縁骨髄、そして17.9%が臍帯血であった。

結果:
  19例(16%)が移植後30日までに感染合併。
  CRP>0.3とフェリチン値>700ng/mLの症例では53.8%が感染を合併した。
  CRPとフェリチン値が上記値以下での感染頻度は5.3%であった。

考察:
  明らかに、CRPとフェリチン値の高値は移植後感染のリスクファクターである。
  フェリチン値については700ng/mL以上で5倍の治療関連死亡率があり、感染リスクは4倍。
  感染リスクの高い症例に限定して予防的抗生剤投与や移植前の除鉄療法も一つの対策である。


コメント:日常的に測定可能な検査項目でもあり、追試が待たれる。

Kanda J et al. Pretransplant serum ferritin and C-reactive protein as predictive factors for early bacterial infection after allogeneic hematopoietic cell transplantation.Bone Marrow Transplant.2010. advance online publication.