EBMナウ
EBM (Evidence based medicine::単なる、少数例の経験から得た知識ではない根拠に基づく医療行為。
今週のEBM,ナウ(305)

-Cancer incidence and mortality with folic acid and vitamin B12-
葉酸と発ガン

目的:葉酸投与と発ガンとの関連を検証した初めての大規模比較試験。

対象:ノルウェ-からの報告。年62歳の6837例の虚血性心疾患例に対してビタミンB群および葉酸を39カ月投与後に38カ月観察した(いずれも中央値)。

結果:表に示すようにがん頻度が葉酸投与群(グル-プ❷)で有意に高い。
   葉酸投与群(❶+❷)と非投与群(❸+❹)のHR1.21と投与群が
     有意に症例数が多い(rate per 1000 observation-year,169 vs 137


グループ
投 与
(◯は投与)
ビタミンB12
ビタミンB
葉酸(0.8mg/日)
症 例 数 1708 1793 1705 1721
がん頻度 10.0%  8.4% P=0.02
がん死亡率  4.0% 2.9% P=0.01

考察:葉酸の不必要な長期投与はがん頻度および死亡率を高めることが示唆された。

コメント:過去に葉酸と大腸がんの逆相関が指摘され、葉酸欠乏はがん化促進、しかし大量の葉酸投与はがん細胞を増殖させるなどが知られている。日常的なサプリメントによる葉酸強化が不必要という今回の結論。葉酸単独投与群がないのは設定が困難なためか。ちなみに市販サプリの1錠に含まれる葉酸は0.2mg。



文献:Ebbing M et al. Cancer incidence and mortality after treatment with folic acid and vitamin B12. JAMA 2009; 302:2119-2126.