EBMナウ
EBM (Evidence based medicine::単なる、少数例の経験から得た知識ではない根拠に基づく医療行為。
今週のEBM,ナウ(287)

-Telomere length in very long-term survivors after HSCT-

(移植細胞の運命を知る?)

 造血細胞移植後の長期生存者は一つの細胞の運命を二つの異なる生体内で観察できる格好のモデルとなります。 対象は10年以上の長期生存44例です。 テロメア長を測定し、レシピエントとオリジナルドナ-との2群間で比較しました。テロメア長の短縮は細胞レベルでの老化指標の一つと考えられています。

対象:年齢の中央値はドナー25.8歳、レシピエントが26.8歳。 観察期間中央値は17.5年。

結果:テロメア長は
 (1)末梢血白血球分画すべてにおいてオリジナルドナ-よりレシピエントで短く(P<0.01)
 (2)顆粒球とリンパ球分画では慢性GVHD非合併例よりもGVHD合併例が短い(P<0.04)
 (3)レシピエントの性別に関係なく男性ドナーよりも女性ドナーからの移植例で短い(P<0.04)
 (4)男性ドナー慢性GVHD非合併例よりも女性ドナー慢性GVHD合併例が短い

考察:慢性炎症などでテロメア長が短縮することが知られている。 今回の報告は慢性GVHDが炎症性疾患であることから納得いくものです。 女性ドナーから移植を受けたレシピエントのテロメア長が短縮する点に関してはさらに研究が必要。 女性ホルモンがテロメア長の短縮を防ぐとの論文もあります。

コメント:さらに長期の観察に期待。

文献: Baerlocher GM et al. Cellular senescence of white blood cells in very long-term survivors after allogeneic hematopoietic stem cell transplantation: the role of chronic graft-versus-host disease and female donor sex. Blood 2009;114:209-222.