EBMナウ
EBM (Evidence based medicine::単なる、少数例の経験から得た知識ではない根拠に基づく医療行為。
今週のEBM,ナウ(268)

-Gonadal function in male-
(化学療法後の性腺機能-リンパ腫294例)

 対象は294例の悪性リンパ腫、1980年から2002年までに治療を受けた17歳から50歳までの男性症例。

評価した性腺機能項目は
 1.テストステロン
 2.SHBG(性ホルモン結合グロブリン)
 3.FSH
 4.LH
です。

 Hypogonadismとはテストステロン/SHBG比が0.25未満としました。 
 診断時年齢の中央値が33歳
 検査時年齢の中央値は49歳
 観察期間の中央値は15年でした。

結果:測定結果を以下の3群に分類しました。
 1.正常例が49%
 2.外分泌異常例(exocrine hypogonadism:FSHだけ上昇しLH,SHBCそしてテストステロン正常値)は20%
 3.内分泌異常(endocrine hypogonadism:テストステロン低値 and/or LH正常域以上)が30%。

結論:男性患者でも化学療法後の定期的なホルモン検査が必要(文献1)。

コメント:悪性リンパ腫の生存率が60%を超えてきている。QOL向上のため、重要な情報。

追加:文献2ではすべてのがん患者で妊孕能が維持されるために、放射線治療を減じて、アルキル化系抗がん剤使用を控え、多診療科でがん治療から挙児までをサポ-トする時代になってきたとの総論があります。 放射線治療は男性の精子形成の回復を遅らせることが知られています。 4Gy以上では5年以上を要し、1Gy未満であれば9-18ヵ月で回復します。 ホジキン病などでは治療終了後2年間は精子DNAへの障害が知られています。 したがって、抗がん剤治療前の精子保存が望ましい方法です。 この保存状態は28年間まで良好であった事が知られています。

文献1.Kiserud CE et al. Gonadal function in male patients after treatment for malignant lymphomas, with emphasis on chemotherapy. Brit J Cancer. 2009;100:455-463
文献2.Jeruss JS et al. Preservation of fertility in patients with cancer. N Engl J Med 2009;360:902-911