EBMナウ
EBM (Evidence based medicine::単なる、少数例の経験から得た知識ではない根拠に基づく医療行為。

今月のEBM,ナウ(4)

乳がんへの自家移植-2-
(文献1: N Engl J Med 2003;349:17-26. 文献2. N Engl J Med 2000; 342:1069-76.)


乳がんへの自家移植に対する無効性を述べた2論文を紹介致します。
{文献1.要約}2003年、アメリカからの報告。10カ所以上のリンパ節転移のあるハイリスク乳がん511症例の検討です。257例が化学療法。254例が自家移植群です。生存率、無病生存率そして再発なしの生存率のいずれにおいても2群間に有意差を認めません。
表1全生存率、無病生存率、無再発生存率のすべてに有意差なし。


表1.化学療法と自家移植との比較(文献1)

  化学療法 自家移植
生存率 62% 58%
無病生存率 47% 49%
無再発生存率 48% 55%

結論:自家移植の有用性は証明されず。

{文献2.要約}転移性乳がんへの化学療法と自家移植との比較試験です。結果は表2に示します。2群間に差はありません。しかし、5年前の報告のため、両群とも生存率が現在よりも低いのが明らかです。これから言える事は過去のデ−タではなく、最新の化学療法成績と自家移植成績とでの比較が大切ということがよく示されています。

表2. 転移性乳がんへの化学療法と自家移植との比較(文献2)

  化学療法 自家移植
生存率(3年)  33% 32%
無進行生存率(3年) 6% 12%

結論:自家移植の有用性なし。

 文献1:Tallman MS et al. Conventional adjuvant chemotherapy with or without high-dose chermotherapy and autologous stem-cell transplantation in high-risk breast cancer. N Engl J Med 2003;349:17-26.
 文献2. Stadmauer EA et al. Conventional-dose chemotherapy compared with high-dose chemotherapy plus autologous hematopoietic stem-cell transplantation for metastatic breast cancer. N Engl J Med 2000; 342:1069-76.