今月のEBM,ナウ(3)
乳がんへの自家移植-1-
(文献. N Engl J Med 2003 ;349:7-16.)
乳がんへの自家移植に対する統一見解は2000年頃までは熱い議論が多く、方向性は定まっていませんでした。化学療法と自家移植を比較したオランダからの報告を紹介します。
{文献要約}乳がんハイリスク885症例の検討です。リンパ節転移はあっても、遠隔転移のない乳がん手術後の56歳以下の症例が対象。443例が化学療法群、442例が自家移植です。5年後再発なしの生存率は化学療法群で59%、自家移植では65%(有意差なし)。10カ所以上のリンパ節転移のある症例では化学療法群51%、自家移植61%(有意差あり)。さらに、細かく解析すると、HER2/neu陰性の症例において無再発生存率は自家移植群で有意に良く(表1−A、P=0.002)、生存率では有意差なし(表1−B)。HER2/neu陽性例では(表1−C)2群間に生存率の差はありません。
結論:HER2/neu陰性の症例でのみ、自家移植により無再発生存率が改善される事が明らかにされた。
表1.−−生存率の比較−−
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化学療法 |
自家移植 |
A |
無再発生存率(HER2/neu陰性) |
46% |
66% |
B |
全生存率 (HER2/neu陰性) |
約62% |
約76% |
C |
無再発生存率(HER2/neu陽性) |
約56% |
約44% |
文献1.から改変
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